四面楚歌-悲運の妃-



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―――――…



『では私は此れにて…』


日が沈み始め、晏惟と梛犀と護衛の交代する刻になったが、崔皇后様はまだお休みになられていた。


代わりに鄒に退室の言葉を述べ、皇后宮を後にする。



宮を出た所で、思いがけない人物が目にうつる。


范丞相…。



崔皇后様に何か御用があるのだろうか?


頭を下げると、范丞相は私に歩み寄った。



「お待ちしておりましたよ。
琴軍妃将軍様…いえ、琴昭儀様。」



私…?



今朝陛下と別れた時に、今宵もとおしゃってくださった事を思い出す。


その迎えで…あろうか?


いや、それであったら侍従長である壁内侍が来るだろう。


范丞相が自ら私に会いに来るというのは、何かしらあるに違いない。


「今宵も陛下からお声がかかっている事は、存じ上げております。
その前に少しお話をさせて頂いてもかまいませんか?」



范丞相は笑みを浮かべそう言うと、手を道筋を促す様に横に差し出す。


やはり、何か私にたのみごとか何かがあるのだろう。


私は頷き促されるままに歩を進める。



行き先は私の室だろう。


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