四面楚歌-悲運の妃-



何を考えているのか、いつもわらない范丞相の思惑が聞けるなら、願ったりだ。


それがわかれば私は動きやすくなる。


なによりも陛下の御為になる。



私はゆっくりと首を縦に振り、范丞相を見据えた。


「では、さっそく申し上げよう。
しかしその前にお聞きしたい。
琴昭儀様…貴女様は何者なのです?
五行の力をも使い、異常な程に秀でている武力。
そして…その仮面。」


先程まで浮かべていた笑みは消え失せ、まっすぐ私を見つめる。



突然の問いに戸惑うが、今まで運よく問われなかっただけだ。


私がいくら忠誠心が強く陛下の御為に働く軍妃であっても、庶民の私が五行の力を有している事を問わずにいれない。


陛下も私に問いたいと思っているだろう。


同じ問いを陛下にされても、私は真実を話す事は出来ない。


李燗や威仔に真の私を告げるとは訳が違う。


丞相が後宮に聖人がいる事を、内密にする事は出来ない。


法を重んじ國を纏めるのが丞相なのだ。


全部とは言わずとも聖人の掟をそれなりに知っているだろう。


聖人が天子様の妃になる事がない事は、昔の記録からわかっているだろう。


それに七神が行方知らずになっていたとわかれば、國を想う范丞相なれば、私を聖人の村に帰すしかない。



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