四面楚歌-悲運の妃-



偽りか?


ただ聖人一族だと言って、私を惑わしているのか?


しかし…


天矢を知り

七神の呪印を知り

五行の力を操り


私を生姫であると見破った

刺客が言っている通り、聖人一族でしか、なしえない事ばかりだ


「我等は聖人を憎み聖人一族を恨み、村を出た者達。
我等の様な者達を生姫が知らぬのも仕方あるまい。
村の長老達は一族を裏切った者がおる事など、聖人には知られたくなかろう。」



聖人を憎み…

一族を恨み…


裏切った者達だと?



込み上げてくる感情に、肩が震え出す。



「あの村から出る事さえ出来ぬ生姫が後宮にいるとは、そなたも裏切ったという事ではないか。
くくく、生姫が裏切るとはなッはははは」



抑え切れぬ感情が、地の底からはい上がってくるのがわかった。


ゆらりと体が揺しながら、一歩ずつ足を前に出す。



私も村を出た身だ。


聖人一族を裏切った事には変わりはない。


目の前にいる刺客と同じと言われれば、否定はできない。


しかし、私は…


私は…!!



『私は…そなたらと違い、天子まで裏切っておらぬ!!!』



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