四面楚歌-悲運の妃-


波立つ水面が焦らすように、ゆっくりと見たい姿を映しだす。


「久しぶりね、冥紗」


優しい声で囁く様に言うのは、二神・風姫(フウキ)である曼琳湶(マンリンセン)。


女聖人の中で、1番年上の琳湶は、私にとっても逞洟や亞縵にとっても優しい姉の様な存在だ。



そして同時に誰よりも厳しい。


「亞縵もいるぞ!」


忘れるなと言わんばかりに、勢いよく現れたのは、四神・雷姫(ライキ)である清亞縵(セイアマン)。


亞縵は小さい頃から私の事を、猫可愛がりしてくれていた。


琳湶と同じに姉の様な存在だ。



後宮に入ってからしばらくして偉罨様と再会し、その後俚督と崙宝にも再会出来た。


そして祁曹の術を通して、全員とこうして4年ぶりに顔を合わせる事が出来た。


なんと嬉しい事だろうか。


たくさん話したい事があるはずなのに、先程から私は話せずにいる。



「貴女が村を出ると偉罨様だけに伝え、私共には言ってくれなかった事を、私は怒っているのですよ。」



笑顔であった琳湶の顔が、急に眉を寄せた。


隣にいる亞縵が、琳湶の言葉を宥める様に琳湶の背に手を延べる。


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