四面楚歌-悲運の妃-
『そうですか…これから頼みます劉内侍。
申し訳ないですが私は威仔に急ぎの用があります故、話は終わりでよいですか?』
後ろの威仔に視線を向ける。
水を汲んできてもらわねばならぬし、その後に李燗の所にいかねばならない。
私が所有する財に関しては殆ど手をつけていないので、得に話す事はないはずだ。
劉内侍は何も言わず私を見据えた。
何かまだ話しがあるというのか?
「今宵陛下は、欺修媛(キシュウエン)様をお呼びになられました。」
…え?
今、なんと言った?
陛下が…誰を…?
「聞こえておられませんでしたか?
今宵陛下は、欺修媛様を黄麟殿にお呼びになられました。」
欺修媛…晏惟を…?
陛下が晏惟を黄麟殿に…
[誰が…とは申せませんが、近いうちに四天王の中から一人だけ、貴女様と同じ様に盾となって頂きます。]
范丞相の言葉が頭の中で響く。
そ…うか。
晏惟が選ばれたのか…
今宵陛下は…晏惟を…
「欺修媛様は琴昭儀様も良く知っておいでの方でありましょう?
武に優れておいでで、尚且つお美しい方。」
口の両端が上がり、先程とは全く違う笑み。
穏やかではなく、その奥に何かひそめられた笑みだ。
『そうです。
そなた…何が言いたいのだ』
自分が故意に出したわけではないのに、低い声が口から出た。
「動揺…いえ、嫉妬ですか?
それとも寵愛を失うかもしれぬ不安ですか?」
!!?