四面楚歌-悲運の妃-
な…にを…言っている…のだ…?
嫉妬…だと?
この…私がまさか…
己の視線が泳いでいるのがわかる。
これでは劉内侍の言う通りに嫉妬している様ではないか。
「おや?言葉も出ませんか?」
まるで挑発するような口ぶりだ。
私の心を見透かしているつもりか?
私の何を知っているというのだ。
この者が見てきた妃と一緒にされては困る。
『私が嫉妬?
軍妃である私が嫉妬など…っ!!』
こんな事言いたかったのではない。
冷静に返すつもりだった
私…は
今の私は私か?
「寵愛は長く続くものと思いなさるな。
軍妃といえど妃に変わりはない。
ここでは嫉妬は罪に非(あら)ず。
嫉妬はしても恨みに変えねばいい事。」
笑みが消えた顔が酷く怖かった。
戦う事で相手を恐れるのとは違う。
誰も何も口にできず、静寂だけが室を漂う。
外そうにも外せなかった視線の先の顔がふいに、柔らかくなる。
「やり過ぎましたかな?
私は貴女様の敵になりたい訳ではないのです。
貴女様は軍妃としてだけではなく、妃としてもしっかりと陛下を慕い忠誠を誓って頂きたいだけ。」
張り詰めた空気が、その言葉と共に和らぐ。