四面楚歌-悲運の妃-
余程緊張と恐怖にかられていたのか、威仔は胸に手を当てて大きく息を吐いた。
そんな威仔をさらに安心させる様に笑みを向けると、威仔も小さく笑った。
再び劉内侍に視線を戻す。
敵になりたくない訳ではなく、私に妃としての自覚を持たせる為に挑発した…
そう意味だったという事だろう。
しかしそれが嫉妬とどう繋がるのだ?
「琴昭儀様は嫉妬はしてはならぬものだとお思いではありませんか?
後宮での争いがその嫉妬故に起こっているからと…。」
その嫉妬から陛下は命を狙われ、そしてそれは陛下の御子にまで被害が及ぶのだ。
故にまだ生まれてもおらぬ御子は狙われ、崔皇后様が狙われているのだ。
私は後宮で起こる争いを無さなければいけない。
恨みや妬みに変えなければいいとはいっても、この後宮で嫉妬は災いにしかならない。
「嫉妬は悪い事ばかりではございません。
嫉妬をする事で妃達はより自らを磨き美しく成長する。
陛下にはまだ妃も軍妃も多くはなく、寵妃も少ない。
しかしこれから陛下には国の安泰の為にも、御子を一人でも多く成してもらわねばなりません。」
まるで私は学問でも学んでいる様な気分になった。
私を諭すように言う言葉に、口を出す気になれない。