四面楚歌-悲運の妃-
∴慟哭
――――――…
ピチャン…
水音がやけに耳に響いた。
霞む視界に動く影が見える。
威仔…?
視界がはっきりしてくると身体を起こし、天蓋に手をかけた。
「申し訳ありません、起こしてしまいましたか?」
焦ったように言う威仔に、首を横に振る。
威仔は抱えるのにやっとなぐらいの器を手にしていた。
さっきの水音は、その器の中の水だったのか
『それは…』
「はい。昨日頼まれた水を汲んできました。
ここに置いてかまいませんか?」
頷くと、陽射しがちょうど照らされる棚に慎重に置かれる。
まだ出たばかりの陽が水に反射する様が綺麗だ。
しばらく目を奪われていたが、冴えはじめる頭に浮かぶ疑問を口にする。
『私いつの間に眠っていたのだろうか?
昨夜は何も?』
そう…あの後に劉内侍と予想以上に話が続き、李燗の所にも行けなかった。
劉内侍との話と言っても、財に関しての事や、話す必要がないものと思っていた事ばかり。
無駄に疲れてしまい、横になったのが最後だ。