四面楚歌-悲運の妃-
―――翌日。
舞妃ノ宮はいつもより静かだった。
三月前、軍妃候補一人一人が、軍妃官軍を相手に力を試された場所へと集まっていた。
あの日と同じ様に、成果を見るために一対一の試験を行う。
誰もがその試験一つで、自らの官職が決まってしまう緊張感に襲われていた。
「ねぇ冥紗。晏惟や崙矣達は欺軍妃将軍との将軍をかけて一戦交えるのでしょ?」
李燗は小さな声で私に話かけて来た。
私が頷くと、李燗は溜め息をついた。
「私はね、冥紗達の様に武術に長けてるわけじゃない。
それが悔しくもあり、寂しかった。」
そう悲しそうに微笑んで言った。
その時、欺軍妃将軍の号令で一対一が開始された。
その様子を李燗は不安そうな顔で見つめる。
交わる木刀の音だけが、響き渡る。
「私…」
え…?
小さく呟く李燗の方をもう一度見る。
「私はだからッ…武軍師の話だけは真面目に聞いた。
…私は刃を交える事ではなく、後宮軍の軍師になって…冥紗達を支えるよ!」
李燗…
そう言った李燗の顔は、さっきとは違う満面の笑みだった。
いつも天子様に寵愛を頂く事だけを夢みていた李燗。
私が知らないとこで、そんな事を考えていたのだな…