四面楚歌-悲運の妃-



―――翌日。


舞妃ノ宮はいつもより静かだった。


三月前、軍妃候補一人一人が、軍妃官軍を相手に力を試された場所へと集まっていた。


あの日と同じ様に、成果を見るために一対一の試験を行う。


誰もがその試験一つで、自らの官職が決まってしまう緊張感に襲われていた。


「ねぇ冥紗。晏惟や崙矣達は欺軍妃将軍との将軍をかけて一戦交えるのでしょ?」


李燗は小さな声で私に話かけて来た。


私が頷くと、李燗は溜め息をついた。


「私はね、冥紗達の様に武術に長けてるわけじゃない。
それが悔しくもあり、寂しかった。」


そう悲しそうに微笑んで言った。


その時、欺軍妃将軍の号令で一対一が開始された。


その様子を李燗は不安そうな顔で見つめる。



交わる木刀の音だけが、響き渡る。



「私…」


え…?


小さく呟く李燗の方をもう一度見る。


「私はだからッ…武軍師の話だけは真面目に聞いた。
…私は刃を交える事ではなく、後宮軍の軍師になって…冥紗達を支えるよ!」



李燗…


そう言った李燗の顔は、さっきとは違う満面の笑みだった。


いつも天子様に寵愛を頂く事だけを夢みていた李燗。


私が知らないとこで、そんな事を考えていたのだな…



< 33 / 390 >

この作品をシェア

pagetop