四面楚歌-悲運の妃-
黄粛帝代の[後宮軍記]は軍妃候補であった時に、第一巻は読んだことがあった。
この第一巻は軍妃候補の講義に使われていたからだ。
冒頭に設立までのことを簡潔に書いてあり、基本は軍妃の軍規や軍妃が妃としての様々な決まりが記されている。
「ここにいたのか、冥紗。」
急に声をかけられ、驚いて振り向く。
そこにいたのは崙矣だった。
どうしょてここにいると分かったのだろうか?
威仔には舞妃ノ宮に行くとしか言ってなかったのに…
「後宮軍記か…。私の一族の歴史は知っているが、私も歴代の軍妃達のことは伝え聞いたことしか知らないな。」
崙矣も昨夜の柳将達の言葉で、同じように感じたのだろうか。
崙矣や悒雉たちの一族のように、軍妃になることが当たり前であるものとそうでないものは違う。
武術ほもちろん、何よりも想いの違いだ。
聖人である私もそうだ。
陛下を守り、皇后様や妃たちを守ることも、戦場に出て國のために戦うことがあたり前であった。
その想いが私達を生かし、強くさせる。
崙矣の一族が軍妃を輩出する一族ではなく、私が聖人でなく軍妃になっていたら、柳将たちのように自らの在る意味を探していただろう。
私と崙矣は何を話すのでもなく、それぞれが[後宮軍記]を手にとり読んだ。