四面楚歌-悲運の妃-
胸元から小さな袋を取り出し、李燗に差し出す。
『これは金木犀の香り。少しむせかえる様な香りであり…、心地良い香りでもある。』
胸元に入っていた小さな袋は匂袋ではないけれど、私の香りが染み付いている。
この国で、この様な香りを持つ者は聖七神いないが、幸いな事に珍しいとされる聖七神は、特徴などの記録は国にない。
聖人は他にも、目が紫色である事などたくさん、他の者と違う事がある。
冥明様から頂いた仮面が力を封じている為、目の色は他の者と同じく茶色に変わっている。
見た目では他に違う所はないと思うけれど、香りであったり、人より体が成熟するのが早い所は隠し様がない。
不思議に思っている者がいないので、正直安心はしている。
「金木犀…成る程。
疑問が解けたわ。
前から気になっていたのよね。」
李燗は匂袋を鼻に近づけ、嗅ぐと笑顔で納得した様に頷いた。
「琴昭儀様、そろそろ范丞相とお会いになる時では?」
威仔がやって来て言う。
「また来るわ。」
そう言うと、李燗は笑顔で部屋を出て行った。
范丞相に会いに出かけなければ。
威仔を連れて、范丞相の元へと急いだ。