四面楚歌-悲運の妃-
呂貴妃様は陛下の異母弟・恢長(カイチョウ)公子のご生母であられる。
現在先帝の妃で、後宮に残るのは稚皇太后と呂貴妃と呉淑妃(ゴシュクヒ)。
後宮の奥にある、散妃ノ宮(さんひのみや)に、居住している。
東側を稚皇太后。
西側を呂貴妃と呉淑妃。
妃嬪同士の妬みや僻みの渦巻くのが後宮。
しかし先帝が崩御された今、何を争われているというのだろうか?
「簡潔に申し上げましょう。
呂貴妃は御自分のお子である、恢長公子の皇帝即位を願っているのです。」
恢長公子の…皇帝即位?
そ、それはつまり…
「そう…陛下の暗殺を企んでおいでなのです。」
あ、暗殺…。
陛下にお子がいない今、陛下に万が一の事があれば、帝位はすぐ下の弟である、恢長公子に渡る事なる。
呂貴妃はそれを望んでいると…。
それを止めようと、稚皇太后が動いていて、争いになっているという事なのだろうか?
「いえ、それは違います。」
違う?
では、なぜ?
「お話は長くなりますが、しかとお聞きくださいますか?」
范丞相は真っ直ぐ私を見つめて言った。
私がしっかり頷くと、ゆっくりと話始めた。
「陛下がまだ皇太子におなりになる前…稚皇太后がまだ貴妃で呂貴妃が淑妃だった頃に遡ります。」
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