四面楚歌-悲運の妃-



では陛下もそれを知っておいでになって…


なぜ…あの優しい稜稟公子様ではなかったのですか?


私は何の言葉にもならなかった。



「あなたは勘違いをしておいでだ。
疑ってはいたのは事実。
けれど、陛下は何も知らなかったのだ。
私と稚皇太后の謀(ハカリゴト)だ。」


え?


陛下は何も知らなかった?

でも、でも…今その事実を知っていても平然として座っておられる。


「稚皇太后は己の権力と欲望の為。
しかし私は違う。
この宮歌国の事を思えばこそ、手助けをしたのです。」



どういう事?


ますます話がわからない。

今のままでは私がここに居る意味がなくなってしまう…。


私が命を捨ててまで守りたいと思ったのは、あの時の稜稟公子がいたからだ。


私が顔を歪ませると、范丞相は再び口を開いた。


「吏祇公子は皇太子の権力を盾にして、残虐な事を繰り返していたのですよ。
黄宋帝にばれぬ様に、女人を寝所に呼び、犯したあげく、絞め殺したり、首を跳ねたり。
…そんな吏祇公子が皇帝になればよかったとお思いですか?」


な…なんと酷い事を。


そんな方が皇帝になられたらと考えたら身震いがした。



< 51 / 390 >

この作品をシェア

pagetop