四面楚歌-悲運の妃-
丞相とて、皇帝と同じなのだ。
優しさと冷酷さの2つをそなえてこそ、国の政(マツリゴト)を取り行えるのだ。
「軽蔑したか?…冥紗。私とて、范夷扶とて、血は流れるのは嫌なのだ。しかし、国の事を一番に考えてこそ、皇帝であるのだ。綺麗事だけで進まないのだよ。」
陛下…
顔を歪ませる陛下の顔は、悔しそうだった。
鳥が傷つき泣いて悲しんだ方だ…
こんな事を悲しまない訳がない。
国の為に誰かを亡き者にする事を見過ごさなければいけない、悔しくない訳がない。
なんて事を思ってしまったのだ…私は…
少しでも陛下を疑ってしまうなんて…
涙が溢れ零れた。
私の涙に陛下は驚いた顔をしたが、すぐ優しく微笑んで言った。
「冥紗…そなたを選び話して良かった。その涙が立派な忠誠心だ。」
陛下…
1度でも戸惑い疑った私に、その様な事を言って下さるんですね。
私は深々と頭を下げた。
「今稚皇太后は、陛下の命狙う呂貴妃と恢長公子を狙っています。
その争いは無くさなければならない。出来れば血が流れない方法でね。
しかしそれ以前に陛下の命が危なくなっては意味がない。後宮での陛下を、守ってくださるかね?」