四面楚歌-悲運の妃-
そんな私に関係なく、陛下はまた身を乗り出すと、私の仮面にもう1度触れる。
「私はそなたの仮面など、気にしてはいないよ。気にする者も多かろうが、そなたまで気にしてはいけないよ。」
そう言って笑うと、仮面に触れていた手が髪飾りに触れ、その手は首筋に触れた。
陛下…?
鼓動はおさまるどころかさらに早まる。
触れられた首筋が熱い…
「あんな事を頼んでしまってすまない。軍妃とはいえ、そなたも妃であるのにな。」
私の首筋の髪をすくいながら話す。
私は必要以上に首を横にふる。
かまわない。
私は守る為だけに、後宮に来ている。
陛下の為に命を捧げる運命…
胸がさらに締め付けられた。
この胸の痛みと、触れる指先の愛しさ。
聖人として陛下を守る為に生まれた私。
なのに…
惹かれてしまう
いえ、ちがう…
きっと…
私は陛下に初めてお会いしたあの時から、陛下に惹かれていた…
だから聖人の村を出て暮らし
後宮に入った。
私は初めから聖人だからではなく、私自身が陛下を思い守りたいのだ…。