四面楚歌-悲運の妃-
この思いは嫉妬や妬みを生むとわかっている。
私は誰かに嫉妬したり、妬んだり…恨んだりしたくない…。
陛下の手はそっと私の首から離れる。
名残惜しく離れる手を見つめる。
私はこれだけで幸せだ。
陛下から直々に後宮の事を頼まれ、必要とされている。
これ以上は望まない。
望むのは国の太平と、陛下の為に死ぬ事。
思いに気付いても、それは変わらない。
いつのまにか早かった鼓動は落ち着いていた。
『私は陛下のご無事と、陛下の世が太平である事のみ。陛下が謝る必要はありません。』
私の言葉に、陛下はなぜか悲しく微笑んだ。
『では、私もこれで…』
そう言って部屋を出た。
なぜ悲しく微笑まれたのだろう?
不思議に思いながら歩いていると、廊下の先に范丞相が立っていた。
「琴軍妃将軍。もうひとつお頼みする事を忘れていました。皇后は身体が弱い…誰かの助けが必要になるはずです。陛下だけではなく、…皇后もよろしく頼みます。」
深々と頭を下げられる。
范丞相…
『はい。』
私も頭を下げると、范丞相はまた陛下の元へと向かった。