四面楚歌-悲運の妃-
「ただ、懐かしく感じる…。会ったばかりなのに、なぜか信頼できるのだ。」
私の言葉に范夷扶はため息をついた。
「私の姪である崔皇后も、他の妃も…お気にめされなかった陛下が、よりによって仮面の軍妃将軍に興味を持ち、お気にめされるとは…他の妃に嫉妬や妬みをかいますよ?」
他の妃に興味をしめさないのは、誰の場所にいても安心出来ないからだ。
呂貴妃や他に私の退位を願う者と通じているかもしれない…
そう思うと、後宮への足は遠退く。
信頼できると思った妃は、冥紗が初めてなのだ。
だから気になる…。
冥紗から香るあの甘い香りにも…
「私は仮面さえなければ、琴冥紗は申し分ない妃だと思っております。陛下にはまだお子がなく、皇太子が決まっておりません。私としてはぜひ皇后との間にと望みますが、一刻も早くお子を…皇太子をと思っております。陛下のお心のままになさいませ。陛下には安心出来る場所も必要です。」
范夷扶…
私はだいぶ気をつかわせてしまっているな。
私は皇帝とし、まだ未熟だ。
気を抜ける場所もなく。
常に誰かを疑い。
范夷扶に心配ばかりさせてしまっている。