四面楚歌-悲運の妃-
悒雉…
私の肩に手を置き、心配そうな顔をして言った。
首を縦に振ると、悒雉は安心したのか、深く息を吐きその場にしゃがみこんだ。
悒雉の身体は微かに震えていた。
私もしゃがみこみ、悒雉をぎゅっと抱き締める。
震えても仕方がない。
初めて殺意のある者と剣を交えたのだ。
その上、予想を越える手練れ者。
五行の力を使えるなんて…
さらにぎゅっと抱き締めると、悒雉も強く抱き締め返してきた。
「冥紗ありがと…。」
そっと身体を離すと、切なく笑い言った。
「冥紗!悒雉!」
声をかけられ振り向くと、晏惟・崙矣・梛犀が宦官に連れられ駆け寄って来た。
「手助けできなくてすまない…」
辺りの惨劇を見渡すと、崙矣がそう言い、3人は悔しそうな顔で私と悒雉を見た。
それ以上、何も言わず5人で抱き締めあった。
私達が陛下を…この後宮を、この先守るという事がどんなに過酷な事なのかを
私達は身を持って知ったのだ。
「四天王様方、陛下がこの後は心配はないとの事でお部屋に戻られる様にとおおせです。私どもがお送りいたしますので。」
晏惟達に付き添って居た宦官の1人が、深く頭を下げ言った。
私達はそっと互いの身体を離し頷く。