四面楚歌-悲運の妃-


――――――――
―――――…



シャランといくつもつけられた髪飾りが揺れ、音を奏でる。


歩くたびに奏でられる音に、私は慣れていない。


いつもより、頭が重い。


衣装も重い。


鏡の前で立ち止まり、自分の姿を見ると


後宮で着飾る妃達と同じ自分がいた。


「お似合いでございますよ。琴昭儀様。」


いつもよりにこやかに笑う威仔が言った。



いつもなら着飾る事はない私が、自ら望んで着飾った事が嬉しいのだろう。


昨日あれから考えた私は、着飾り少しでも偉罨様に気付かれない様にする事にした。


聖人の村ではこの様に着飾る事はなかったから…


少しは別人に見えるかもしれないという、小さな望み。


それに…陛下にお会いするのに頂いた物を着ないのは

陛下の好意を無下にする事になる。



仮面さえなければ、美しく見えるだろうか?


そんな事を思うだびに、私も女に過ぎないのだと実感する。


もう一度鏡に写る自分を見ると、きびすを返した。


「行きましょう。」


威仔に声をかけ、謁見の間に向かう。


< 80 / 390 >

この作品をシェア

pagetop