四面楚歌-悲運の妃-
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シャランといくつもつけられた髪飾りが揺れ、音を奏でる。
歩くたびに奏でられる音に、私は慣れていない。
いつもより、頭が重い。
衣装も重い。
鏡の前で立ち止まり、自分の姿を見ると
後宮で着飾る妃達と同じ自分がいた。
「お似合いでございますよ。琴昭儀様。」
いつもよりにこやかに笑う威仔が言った。
いつもなら着飾る事はない私が、自ら望んで着飾った事が嬉しいのだろう。
昨日あれから考えた私は、着飾り少しでも偉罨様に気付かれない様にする事にした。
聖人の村ではこの様に着飾る事はなかったから…
少しは別人に見えるかもしれないという、小さな望み。
それに…陛下にお会いするのに頂いた物を着ないのは
陛下の好意を無下にする事になる。
仮面さえなければ、美しく見えるだろうか?
そんな事を思うだびに、私も女に過ぎないのだと実感する。
もう一度鏡に写る自分を見ると、きびすを返した。
「行きましょう。」
威仔に声をかけ、謁見の間に向かう。