四面楚歌-悲運の妃-
謁見の間は後宮・黄麟ノ宮ではなく、麒麟城の中心にある。
ここへ来て後宮内しかいなかったから、麒麟城に足を踏み入れるのは初めてだ。
謁見の間の前までくると、范丞相が待っていた。
「琴昭儀様こちらへ。もうすぐ大神様が参られます。」
范丞相に促され中に入る。
正面の高い位置に黄金の輝く玉座。
そこにはすでに陛下が座っていた。
微笑まれる陛下に頭を下げて、指示された場所に立った。
向かい合う反対側には、宮歌国軍・燕大将軍(エンダイショウグン)
軍事を司るの贏太尉(エイタイイ)
監察・政策立案を司る、孟御史大夫(モウミシタイフ)
の3人が立つ。
誰もが偉罨様が来るのを静かに待った。
「大神様のご到着にございます。」
外から響く大きな声と共に、扉が開けられる。
陛下以外の私を含めた5人は深く頭を下げる。
袖の中ににある手のひらにじわっと汗が滲み出るのがわかった。
見えないけれど、足音は中に入って来きてしばらくして止まる。
「新皇帝・黄秦帝にこの度のご即位の祝辞に参らせていただきました。わたくし聖一神・火聖君にございます。」