四面楚歌-悲運の妃-
「よく参られた。会えて光栄に思います。さあ、聖大神も皆も椅子に腰かけるが良い。気を楽にされよ。」
陛下がそう言うと、下げていた頭をもう一度深く下げると椅子に座る。
顔を上げると、懐かしい偉罨様が瞳にうつる。
最後に見た日より、大人になられた。
陛下への挨拶に集中されているからか、私に気付いていない。
それとも、私だと本当にわからない?
「ご即位誠に喜ばしい事でございます。新皇帝のご誕生に、聖人8人皆喜んでおります。宮歌国の太平の為、我ら八神、陛下お力になる所存でございます。」
「礼を言う。私はまだ若輩者故、至らぬとこもあるかもしれぬが、共にこの宮歌国を守り、太平の世を保とうぞ。」
陛下の言葉に、偉罨様はもう一度深く頭を下げる。
頭を上げようとした時、肩が一瞬ビクつく。
偉罨…様?
ゆっくり上げられた頭は、私の方に向けられる。
偉罨様と目が合う。
「この香りは…」
偉罨様は小さな声で呟いた。
気づかれた…
そうだ…忘れていた。
私の…聖七神だけがもつ香り。
ガタガタっ肩が震え、身体中の血の気がひく。