四面楚歌-悲運の妃-
この香りは隠す事は出来ない。
忘れていなくとも、どうしようもなかった。
「紹介するのを忘れていた。その者は新しく軍妃将軍となった琴冥紗と申す。仮面は諸事情によりつけておる。気にしないでいただきたい。」
私に目をやる偉罨様を見て、陛下が紹介をする。
「冥…紗…!?」
偉罨様は目を大きくして私を見つめる。
完全に私だと気付いた偉罨様を見て、私はゆっくり目を瞑った。
やはり、今日までであったか…
気付かれない事を望むなど、雲を掴む事だった…。
陛下…申し訳ありません。
私はもう陛下のお側にいられません。
「どうされた?聖大神。」
陛下の言葉に偉罨様はハッとする。
もぅ1度私をチラりとみると、陛下に向かい合った。
「いえ…女人がおられたので、つい目がいってしまいました。」
え?
それだけ?
私は思わず顔をあげる。
偉罨様の言葉に陛下から笑いが零れる。
「聖大神からその様な言葉が聞けるとは。琴軍妃将軍は軍妃将軍歴代一の強さなのだよ。」
偉罨様は私の顔をチラリと見る。