四面楚歌-悲運の妃-
しっかりしなければ。
戸惑っていては、だめだ。
偉罨様の剣を振り落とし、少し距離をとる。
「ずっと探していた…。いくら探しても、そなたの気をどこにも感じなかった。」
偉罨様はあけた距離をすばやく一気につめると、容赦なく剣を振る。
カシャンッ
『くっ…。』
ギギギギ…と重なる刃が摩れる音が鳴る。
「その香りがなければ、私も気づかなかった。まさか…後宮にいるなどと、思いもしなかった。」
やはり、この香りが私だと気づかせてしまったのか…。
カシャンッ
カシャンッ
刃が重なるたびに、偉罨様は言葉を発する。
「そなたが、村にいる事が苦痛なのは知っている。戦いが嫌になったのではないのか?なのになぜ軍妃になった?」
カシャンッ
カシャンッ
ギリリ…
『角呼国との戦の折に出会った、優しい公子様のお話を覚えておいでですか?』
私の言葉に、偉罨様の肩が揺れる。
兄と慕った偉罨様だけに話した…陛下との思い出。
『あの公子様が皇帝になられたのです。それ故お守りしたいと思った。』
カシャン
少し緩んだ偉罨様の剣を跳ね返す。
「…ツ。」