四面楚歌-悲運の妃-
私の跳ね返しの反動で、偉罨様は中を舞い受け身を取る。
「なれば、村に戻ってくればよいではないか?村を一度抜け出したとはいえ、冥紗なれば快く迎えた。」
軽やかに地面に降り立つと、ゆっくりと私に近づきながら言う。
その顔はどこか悲しそうだった。
首を横に振る。
『聖人としてではなく、私自身が陛下をお守りしたいのです。陛下をお慕いする…1人の女として…ッ。』
偉罨様の目が見開き、動きが止まる。
そう…私は1人の女として陛下をお慕いしている。
初めて出会ったあの日から…
聖人として…抱いてはいけない感情だと知っている。
聖人は陛下の盾…
そして武器…
陛下をまもり、宮歌国を守るためだけにいる。
陛下の為にある命
陛下の為に捨てる命
なれば、お側でお守りし朽果てたい。
私は聖人であって
聖人ではない…。
神人などと呼ばれる資格はない…私はただ1人の女…
涙が零れる。
「冥紗…」
お互いもう剣を振ることが出来なかった。