四面楚歌-悲運の妃-
「前に敗戦した角呼国は、再戦の機会を伺っておる。他3つの国も油断はできない。聖人は宮歌国だけではない事を忘れるな…。」
その言葉に私の肩が小さく揺れる。
そっと仮面に触れると、一瞬顔を歪めきびすを返し部屋の扉を開けた。
部屋を出て行く偉罨様の背中を見つめたまま、私はその場に立ち尽くした。
四方を敵国に囲まれている事を忘れていた訳ではない。
私はすべての事から陛下を、国を守ろうと思っている。
他国の情報は聖人達が1番よく知っている。
偉罨様が私に忠告するという事は、実際に各国は宮歌国に攻め入る時期を伺っているのだ。
宮中内での琴皇太后と呂貴妃の争い
四方に囲んだ敵国。
偉罨様の言う通り…仮面を外す日はそう遠くないと思うと、身体が震え出す。
問題は山の様にある。
聖人が8人揃っているのは、宮歌国のみ。
他四国は2人ずつ。
属性[火]を持つ聖大神・火聖君と属性[生]をもつ七神・生姫は、他国には生まれない。
それ故、聖人だけの力ならば、宮歌国が一番だ。
しかし四方から同時に敵に攻め入れられてしまえば、聖人だけの力では抑えきれるかどうか…。