四面楚歌-悲運の妃-


不安がっていては、陛下をちゃんとお守り出来ない。

私が仮面を取り、ここに居れなくなったとしても…



私は命有る限り陛下を守ると決めた。


恐れてばかりでは駄目だ。


すでに小さくなった偉罨様の姿を、もう1度見据えると足を前に進める。


陛下や范丞相が待つ謁見の間に戻ると、陛下はいつもの優しい笑顔で迎えてくれた。



「時間を頂きありがとうございました。たいへん参考になりました。良い軍妃をお持ちになりましたね、陛下。」


「そうか。それは良かった。冥紗は私の自慢の妃だ。」


にこやかに偉罨様に言葉を返す陛下。



「末永く陛下をお守りする事を再度お誓い申し上げます。他国に不穏な動きあらば、直ちにこちらにご報告いたします。」


偉罨様は最後にもう一度深々と頭をさげきびすを返し謁見の間を後にする。



扉が開かれると、両手を合掌させる。


両手から炎が生まれ、偉罨様の周りを回転する様にうごめく。


合掌した手を前へ翳すと、炎は神々しい麒麟の姿に変わる。



久しぶりに見た偉罨様の[火]の力。


炎の麒麟。


戦いにおいて、もっとも強い属性獣。



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