芸人
「おはようございます。」

一斉に、動物園のパンダを見るような目つきで睨まれる。
楽屋に入った瞬間は、重苦しい空気である。
まるで、戦場の真ん中にいる気分である。
周りの言葉は無いが、目つきが鋭い。相棒以外は皆、敵である。
戦いに行く空気が、部屋中に充満している。
普通は、戦争に持って行く武器は、機関銃など兵器だが、
芸人の武器は、ネタである。楽屋から、舞台袖に行く間が一番緊張する。
野球で言えば、最終回2アウト満塁の場面での、登場みたい感じである。
舞台袖に来ると、頭がスーパーカーのエンジンみたいに、フル回転する。


一気に、緊張とテンションが、同時に上がってくる。
緊張を抑えるために、タバコを何本も吸うが、足の震えは止まらない。

「凄い空気ですね。緊張します。」

「そうか」

「さすが余裕ありますね:」

「そうか」

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