彼がメガネを外したら…。〜恋のはじまり〜
恋のはじまり
青天の霹靂
それは、この街で一番賑やかな場所。
デパートやちょっとおしゃれなファッションビルに囲まれた、スクランブル交差点での出来事だった。
横断できる音楽が鳴り始め、絵里花が渡り始める。すると、向こうから見慣れた男が歩いてくることに気がついた。
〝見慣れた〟どころではない。その男は、絵里花に「好きだよ」と甘い言葉を囁き、キスをし、二人で秘密の時間を共有していた絵里花の彼氏、崇(タカシ)。
「あ…!」
思いがけないところで出会えた嬉しさに、絵里花の表情が明るくなる。道路を渡る人の波を避けて、崇の近くまでたどり着き、
「崇くん!」
と、声をかける。
すると、絵里花に気づいた崇は、途端にその表情を凍り付かせた。
その不自然な反応に、絵里花もいつもとは違うものを感じ取り、立ち止まる。
崇は一人ではなかった。かと言って、一緒にいたのは友達でもない。
絵里花もよく知っている大学で後輩だった今日子。二人の手は、しっかりと握られていた……。
「あ……」
絵里花の姿に気がつくと、今日子も決まり悪そうな声をあげた。
信号が点滅を始める。絵里花がそれに目を逸らした拍子に、崇は今日子の手を握り直して歩き出した。
絵里花は思わず振り返って、二人の背中を目で追う。けれども、信号が変わり、絵里花は急いで反対方向へ走った。
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