彼がメガネを外したら…。〜恋のはじまり〜

理解不能生物




絵里花の職場は、歴史史料館。絵里花はそこで、嘱託職員をしていた。
目の前には、数通の古文書。湿度も温度も一定に保たれ、外の光も射さない収蔵庫の中で、絵里花は古文書の整理業務を任されていた。

ここでは、どんなに絵里花が着飾っても、どんなに洗練された立ち居振る舞いをしても、それは虚しいだけだった。広い収蔵庫の中には、絵里花一人だけ。
ここで絵里花が仕事をさぼっていても、見咎められることはない。仕事が手に付かなくても、とりあえずは支障にはならない。

だから、絵里花はまた同じ思考を繰り返す。
何度も、三日前の出来事が頭の中で再現されて、そうなってしまった原因を考え続けた。

考え続ける時間はいくらでもあったが、それを続けていてもこのまま時が過ぎていくだけだ。
崇からは、何の弁解もなければ、連絡ひとつ寄越してこない。


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