愛されたい、だけなのに~先生、幸せって?~【3】
「彼女が高校2年生の時でした。真面目で大人しい生徒だったので、特に問題なく学校生活を送っているものだと思っていました」
ぽつり、ぽつりと喋る校長先生の言葉に重みがあるのが伝わってくる。
「しかし、2学期が始まってすぐに彼女が自殺したと報告を受けました」
ドクン。
「すぐに職員会議を開き、当時の担任に聞き取り調査をしたのですが¨何も知らない¨としか、答えませんでした。数日経ってから、保護者の方から遺書を見せられ学校内で何かがあったと知りました」
私が見てしまった、遺書ー…
「担任を問い詰めても何も知らないとしか言わないので、生徒にアンケートを取ることにしたんです。匿名でいいから、知っていることを全て教えてくれとー…」
イジメにあっていたと書いてあった。
「彼女と同じクラスだった生徒数人のアンケートに、イジメを目撃したということが書いてありました。イジメていた生徒の名前も、当時の担任が相談にのっているのを見たという生徒もいました」
友達も先生も助けてくれないとー…
「遺書に書いてあった通りだったんです。生徒たちは、イジメを見てみぬふり、担任は嘘をつきイジメを黙認した結果が最悪の結果を招いてしまった」
校長先生の肩が震えている。
「すぐに当時の校長に報告し、イジメがあったことを保護者の方に説明し謝罪しないとと言ったのですが…聞いてもらえませんでした」
「…どうして…?」
「イジメを認めてしまうと、学校の評判が悪くなる。イジメていた生徒たちが晒し者になってしまうと…」
な…何それー…
「私は当時、ただの学年主任でしかなかった。だから、上が決めたことには従うしかなかった」
従うしかなかったってー…
「"イジメはなかった"と。そう伝えた時、当時まだ中学生だった柳先生の表情は、今でも覚えています。睨み付けるように私を見て、"あんたらは、学校の評判とイジメてた生徒を守るんだな"と…」
柳先生…
「"姉ちゃんは誰も悪くないって言ってたけど、俺はあんたらを許さない。守るべきものを守らないあんたらなんか、ぶっ殺してやりたいぐらいだ"と言われた時は、上に従っているだけの自分を殺してくれと思いましたよ」
柳先生…
「まさか柳先生が教師になるなんて思ってもなかったですから、採用試験の時は驚きましたよ。面接官は私だったんですが、"あなたのような教師にはならない"と昔と同じ目で言われた時は、お姉さんのことを想って教師になったんだなと思いました」
下を向いて喋っていた校長先生が顔を上げ、目が合った。