愛されたい、だけなのに~先生、幸せって?~【3】
「櫻井?起きてる?」
ドアの向こうから、柳先生の控えめな声が聞こえる。
「あ、はい」
慌てて髪を整え、ドアに向かう。
ドアを開けると、柳先生が立っていた。
「あ…おは…」
なんとなく、気恥ずかしくて挨拶できない。
するとー…
「おはよう、櫻井」
ふんわりと優しい笑顔で、柳先生が言った。
ドキン!
「…っ」
きゅんっと、胸が締め付けられる。
ただ、挨拶されただけなのに…
胸に当てた手のひらを、心臓を掴むようにギュっと握りしめる。
ドキドキ…ドキドキ…としているのが伝わってくる。
「朝食の用意できてるから、食べてて。俺、ちょっと出てくるから」
「え…」
こんな朝からー…どこに?
「櫻井の洋服、どうにかしないといけないだろ?朝早すぎて店開いてないから、母さんのとこ行って何か借りてくる」
「あ…」
そうだ。
学校の鞄は幸い持っているが、私服などは母親のアパートに置きっぱなしだ。
「すいません…」
「いいよ。じゃあ、行ってくるから。ゆっくり朝食でも食べてて」
そう言うと、柳先生は出て行った。
その後ろ姿を見ながら、また自己嫌悪になる。
戻って来て早々、また柳先生に迷惑かけてる。