恋のかけ引きはいつも甘くて切なくて





ーグッ‼︎ー



そう思った時だった。





「大丈夫⁇」

「…えっ⁇」



ふとした瞬間、
優しく声をかけられる。

私の腕は倒れる直前に、
誰かに引っ張られて
気付けば誰かの腕の中にいた。




「わっ⁉︎ご、ごめんなさいっっ‼︎」


やっと自分の置かれている
状況を把握した私は、
慌てて離れようとした。




「しーっ…。
今暴れたら、他の人の
迷惑になっちゃう。
嫌だろうけど、学校まで
我慢して⁇ね⁇」


「えっ⁉︎あ…
は、はい…。」


静かな車内の中、
その人はそう言うと
私の肩を優しく抱きながら
黙って窓の向こうを見ていた。




その人の事を下から見上げる。

茶色の髪の毛に整った顔。

白くて長い指に、良い匂い。



こんな人…
絵本の中の王子様みたい…。



私はそう思いながら、
顔が赤くなっていくのが分かった。
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