【完】『空を翔べないカナリアは』
夕方。
早めに仕事を済ませた貴慶が、新しく美優のために買った真っ赤なヘルメットを携えて仲通のスナックへやってくる。
美優が後ろに乗る。
赤ヘルの美優は貴慶にしがみついて、貴慶はスロットルを回してバイクは動き出す。
「…あたし、こういうの初めて」
「しっかり捕まっとき」
貴慶の運転は、乗り物酔いしやすい美優が珍しく酔わなかった。
あとから聞くと、
「スクーターからハーレーまで何でもこなす手練れ」
ということらしかった。