【完】『空を翔べないカナリアは』
下校の時間、校門前に美優が来ると、貴慶がいた。
「美優、おつかれ」
ポンと貴慶が赤ヘルを渡す。
「ね、どっか連れてって」
「遠くは無理やで」
「うん」
「じゃあ乗って」
貴慶の後ろに美優が乗ると、再びバイクは走り出した。
「リクエストは?」
「夜景がいい」
美優と貴慶を乗せたバイクは、桜木町から県庁の脇を、山下公園を左に、元町の谷戸橋から坂を登った先のフランス山にあった公園の前で停まった。
「着いたよ」
美優と貴慶はヘルメットを手に、人のない公園の見晴らしの開けた位置まで来た。