【完】『空を翔べないカナリアは』
〔7〕
美優は夜景を見ながら、
「ねぇ、貴慶」
「ん?」
「美姫から聞いたよ、綾香さんのこと」
「さよか」
「最初は何で隠すのかなって思ったけど、ちょっと冷静になって、貴慶の性格を考えてみたら、何か納得できた」
「えっ?」
貴慶は向き直った。
美優は眼下の夜景を向いたまま、
「だって貴慶はさ、いつもあたしのことだけ気にしてくれてるじゃん」
「まぁな」
「それであたしがヤキモチ妬いたら、何かみっともないって気がしてさ」
美優は振り向いた。