【完】『空を翔べないカナリアは』
そうしたクリスマスが近づいた月曜日の夜、いつものように美優が鶴見ベースを訪ねると、貴慶が座る椅子の対面側に、知らない女がいた。
「あ、美優ちょうどよかった。京都から妹が来とってやね」
彼女は白川千尋と名乗った。
彫りの深い貴慶とはあまり似つかない、あっさりした顔立ちをしている。
「千尋とは母親が違うからなー」
「兄がお世話になってます」
やんわりとした京言葉で、千尋は会釈した。