【完】『空を翔べないカナリアは』
この一言が千尋の、美優に対するイメージを大転換させた。
「兄やん、なんだかんだ言っても、女を見る目だけはあるね」
「なんちゅう生意気なことぬかしよんのや」
と言いながら、貴慶は豪快に笑った。
「でさ、京都には帰らないの?」
本題はそこらしい。
「そんなん、どっちゃみち会社は千尋が嗣げばえぇやないか」
貴慶は突き放した。
「何ぼ男でも所詮うちは脇腹やで? 嗣げると思うか?」
「うーん…でも…」
千尋は得心が行かないような貌(かお)ぶりをした。