【完】『空を翔べないカナリアは』
が。
貴慶は構わず続けた。
「だいたい最初、オトンはうちのオカンと結婚する気でおったのを急に反故にしてやね」
と、美優が初めて聞くことばかりが出てきた。
「そんで、生まれたばかりのうち抱えたオカンに、札束で頬っ面ひっぱたくように手切れ渡して、ほんでいなくなったんやで」
それでどれだけ苦労させられたか、と貴慶は言った。
「そのてん千尋のオカンはちゃんと籍も入れてもらえとるし、学費かてオトンが出したし」
千尋が嗣ぐのが筋道だ、と言うのである。