【完】『空を翔べないカナリアは』
家族、と貴慶は呟いてから、
「新しい家族、か…」
「そのためにも、あたしやっぱり、卒業したら貴慶と暮らす」
もう決めたから、と美優は自らの決意を表明してみせた。
「だから貴慶、一人で抱え込んだりしないで」
美優は貴慶を背後から抱き締めた。
貴慶は美優の腕にふれると、
「美優、おおきに」
ようやく、貴慶から笑みがこぼれた。
貴慶はやっと、何か方向性を掴んだような気がしたらしかった。