【完】『空を翔べないカナリアは』
たとえ不細工なチョコでも貴慶は食べてくれるであろう、というのは美優も理解している。
前に焦がしてしまった焼き菓子を、
「美優のは美味いね」
と言ったあと、しばらくして貴慶が腹を下したという事実がある。
それでも。
「あれは焼き菓子を食うたんと違う、美優の気持ちをいただいたんや」
と貴慶は言った。
とにかくそういう貴慶である。
しかし。
絵心がないと幻滅されそうで、美優はそこが心配でもあった。