【完】『空を翔べないカナリアは』
泣きじゃくる美優を、貴慶は抱き締めるぐらいしか、出来なかった。
きっと、
──今は何を言っても言い訳にしかならんやろ。
と感じたらしい。
美優の髪を撫でた。
フレグランスとも違う、いわゆる女の子の匂いとしか解説のしようのない、貴慶にはかぐわしい香りがする。
「美優…ごめんな」
貴慶の武骨な手が美優の頬を包む。
「…うん」
美優の濡れた眼は、貴慶をじっと見つめている。
(絶対この子を裏切ったらあかん)
貴慶は、包み込むように美優をふんわりと再び抱き締めた。