【完】『空を翔べないカナリアは』
〔2〕
月が変わった。
この時期あたりから貴慶の言動に、少し変化が見られた。
あの薄情を通り越し、ときには冷徹とも不遜ともとれる、あの突き放したような言い方を、ほとんどしなくなったのである。
真っ先に気づいたのは、美姫であった。
「貴慶さん、何かあった?」
何か感づいたらしい。
が、
「さぁ…桜の時期でも近いからちゃうか」
などと、相変わらずのらりくらりとはぐらかすのだが、その声調子にトゲはなかった。