【完】『空を翔べないカナリアは』
大社の町に着くと、空気が少しだけひんやりとしている。
門前町をぶらぶらとしながら、しかし美優と貴慶は、列車の中での話もあって、何を話せばいいのか、きっかけを掴むことすら出来ず、ただ漫然と歩いた。
気がつくと、鳥居が近い。
「せっかく来たから、お詣りだけはしとこ」
ひさしぶりに美優が口を開いた。
「せやな」
貴慶はついて行く。
鳥居をくぐって松並木の、玉砂利を踏み締めるジャクジャクという音より他に、たまに外国人の話す英語とおぼしき声ばかりの参道を、二人は黙って歩いた。