【完】『空を翔べないカナリアは』
参拝を済ませ、御神籤を引いたり御守を買ったりした美優と貴慶は、そのまま駅まで戻って、予約の宿がある松江の町まで電車で移動した。
駅前で観光用の自転車を借り、大橋を渡ると、森の上に黒い下見板の張られた、古色の乗った天守閣が見える。
「あたし、お城って初めて見た。貴慶は?」
「うちのオカンの地元に久保田城ってのがあって、それは見たことがある」
「確か貴慶のママって、秋田だったっけ?」
「せやね」
「…きりたんぽ、美味しいよね」
美優は言ってて我ながら可笑しかったのか、一人でクスクス笑い出した。