【完】『空を翔べないカナリアは』

が。

「ジタバタあのこのと立ち騒ぐのは、うちの性分ではない」

と貴慶は、平然とまでゆかないが、妙に落ち着いていた。

「貴慶…大丈夫?」

「いや、うちは鍵はしっかりかけてあるし、出かける前にブレーカーを落としてあるから、火が点く理由は放火しかない」

そうなったら、いずれ犯人を探すことになる…という見立てを貴慶はした。

「でもさぁ」

「えぇか美優、こんなとき二人して騒ぎ立てたらあかんのや」

貴慶は諭すように語る。

「今は美優がワタワタしとるから、うちが冷静にならなあかん」

それにな、と貴慶は言う。



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