【完】『空を翔べないカナリアは』
美優は貴慶の神経がどうなっているのか分からなかったが、少なくとも常人にはない視点があることだけは、夕方の帰る時点までには判然とした。
松江駅から再び夜行列車に乗ると、米子からまた伯備線で倉敷までゆく。
「どうしてそんなに落ち着いていられるの?」
美優は不思議で仕方がない。
「あのな美優、焼けたもんは元には戻らん」
要は焼けた後始末が大事や、と貴慶は言い、
「こないだからちょっと仕事が減ってきとるのもあったし、美優が卒業したら、違う仕事を違う場所でやろうかなとは考えてた」
その機が早くなった、とでも言いたげな様子である。