【完】『空を翔べないカナリアは』
「でも貴慶…」
「あのな美優、こういうピンチは変わろうとせんからピンチなのであって、変わろうとするなら逆にリセット状態やから、これほどの千載一遇の機はない」
つまり変わる機会が早まっただけに過ぎない、と貴慶は言いたいのであろう。
こうした貴慶の見切りのいさぎよさは、こういうときの美優には頼もしく映った。
「取り敢えず明日は早いから寝るさ」
貴慶は寝台車のベッドに横たわると、そのまま眠りこけてしまった。