【完】『空を翔べないカナリアは』
貴慶は仰天した。
「ママさんのとこに?」
「だって、美優と付き合ってるでしょ?」
「そらまぁそうですけど…」
「だったら家族と同じ、うちにしばらくいなさい」
「はい」
「で、バイクも焼けたんだって?」
寿司屋の大将が言う。
「丸焦げでしたからねぇ…仕事の再開にはしばらくかかるかと」
「だったら、うちの使ってないバイク使うかい?」
「いくらですか?」
「あんなのタダでいいよ、古いから」
聞けば四十年ぐらい前のらしく、従業員の出前用に買ったが、最近はほぼ使ってないという。