【完】『空を翔べないカナリアは』

〔8〕


九月になって美優の新学期が始まっても、貴慶はまだ鶴見ベースに戻れずにいた。

「裁判が終わるまで、証拠保全で手をつけられへんのですわ」

と貴慶は頭を抱えていた。

九月いっぱいで契約を更新しなくてはならないが、これでは更新どころではない。

取り敢えずバイク便の仕事は例の寿司屋の大将のCD90のおかげで順調であったが、

「なかなか事務所になりそうな物件がない」

というのもあった。



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