【完】『空を翔べないカナリアは』
三日間の京都への滞在のあいだ、西陣へ行ったのはこのときだけであった。
あとの二日は。
通常の観光客とほとんど変わらないであろう、嵐山や宮川町、新京極や錦市場をぶらぶらと散策したりして過ごした。
「祇園町なんて初めてちゃうかなぁ」
みやこびとのみやこ知らずや、と貴慶は笑っていた。
が。
心の奥に抱えてしまってある、闇のようなものを消すまでには至らなかったらしい。
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